【今週のカーステ】
91年、名古屋クアトロにて。
「4枚目のアルバムが出ます。」
ベース山本秀史が静かに語り始めた。
観客のあたたかい拍手。
山本「
もう、出せないかと思ってました。」
途端にざわめき。不穏な何かを感じ取れた。
アンコール曲『真昼の月』終了後、
メンバー退場後もまだ客電が点かず、もしやまだ演奏が見れるのか
と思いきや、スタッフたちがゆっくりバンドセットをばらし始めた。
真っ暗なままのステージで、
わざわざ懐中電灯で探りながら機材の電源を切る。
異常を察知し、メンバーを呼び続けるファンの声に誰も応えない。
一体、これはどういう事なのか。
釈然としないまま、とにかくクアトロを出た。
結局、それが
“DOVE”を見た最後で、
約束の4枚目は発売されずじまい。
バンドブーム最大の功績は、
メジャー・マイナー問わずミュージシャンにチャンスを与え
様々な音楽ジャンルを世間一般に紹介した事。
(「下手な鉄砲も数撃ちゃ」的な)
そんな世相だからデビューできた、
そして翻弄された数多くのバンドのひとつ。
典型的なプログレッシヴ・ロック。
U2やポリスを髣髴とさせる無機質なサウンド。
トリオならではの、強烈な個性同士のリスキーな連係。
それらに、
CDの売り上げに結びつく要素は皆無。
要は“通好み”の
一般客置き去り独走ドリブラー。
そして自滅していったワケだ。
詞はメッセージ色が強く、青臭さは否めない。
それを十分カバーする確かな技術と
じっくり練り込まれたアレンジ。
もっと、報われてもよかったんじゃないか。
CD売れなくても、地道に続けてくれてたら…。
時々そう思う、そんなバンドです。
ワタクシのベースの“生きた教材”は山本さんでした。
エフェクターの組み合わせも、ピック弾きのスタイルも
激しいステージワークもどんどん
パクった。
初めてオーダーしたベースも、当時の彼のと
同じシェクター製、
同じエボニー指板、
同じウォルナット材(胡桃の木)。
26万円。
完全ではないものの、かなり似た音質になりました。
クセのあるゴリッとした音で、今でも気に入ってます。
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